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キャラクター考察鋼の錬金術師

【鋼の錬金術師】ホムンクルスたちの「人間らしさ」を考察 - 七つの大罪の末路

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ホムンクルスは「人間の否定」として設計された

お父様(フラスコの中の小人)は自らの感情を切り離してホムンクルスを生み出した。傲慢、嫉妬、強欲、色欲、暴食、怠惰、憤怒。人間の「七つの大罪」を一体ずつに分配し、自分は感情を持たない完全な存在になろうとした。

この設定が秀逸なのは、ホムンクルスたちが「人間の一側面を煮詰めた存在」になっている点だ。彼らは人間ではないが、人間の感情の純粋培養版。だからこそ、人間以上に「人間的」な瞬間が生まれる

全27巻を通じてホムンクルスたちは敵として立ちはだかるが、単純な悪役は一人もいない。荒川弘は七体全員に「死に際のドラマ」を用意し、そこで各キャラクターの本質を浮き彫りにした。人間を見下す者たちが、最後に人間の何を見たのか。それがこの作品の最も興味深いテーマの一つだ。

全108話の中で、ホムンクルスの退場シーンはいずれも印象的だ。倒された、ではなく「何を残して消えたか」に荒川弘のキャラクター造形の力が凝縮されている。

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ラストとグラトニー──「欲望」の切なさ

ラスト(色欲)はマスタングの焔に焼かれて消滅する。「いい目をしている」とマスタングに告げた最期の台詞は、敵に対する純粋な賞賛だった。人間を誘惑し利用することが存在意義だったラストが、最後に見せたのは「強い人間への敬意」だった。

2003年版アニメではラストがより深く掘り下げられ、人間だった頃の記憶に苦しむ悲劇的な存在として描かれた。原作版は潔い散り方で、どちらのラストが好きかでファンの好みが分かれる。

グラトニー(暴食)はラストを慕っていた。「ラスト、ラスト」と泣きながらラストの死を嘆くグラトニーの姿は、知性の低いホムンクルスにも「情」があることを示している。グラトニーは最終的にプライドに吸収されるが、ラストの死後の彼は明らかに「悲しんで」いた。

食欲だけの存在に見えたグラトニーに、仲間への愛着がある。暴食の権化が最も人間らしい感情を見せるという逆説が、荒川弘の皮肉の効いた筆致だ。

この二人はホムンクルスの中で最も早く退場するが、彼らの死がマスタングとエドの物語を加速させる触媒になっている。敵の死が味方の物語を動かすという構造は、全108話の中で何度も繰り返される。

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エンヴィーの涙──最も人間を憎み、最も人間に憧れた

エンヴィー(嫉妬)はおそらくホムンクルスの中で最も「人間的」な存在だ。人間を虫けらと罵り、イシュヴァール戦争の引き金を引き、マスタングの親友ヒューズを殺害した。全編を通じて最も残虐なホムンクルスに見える。

しかしエドに「お前は人間が羨ましかったんだろう」と看破された時、エンヴィーは涙を流した。「嫉妬」の名を持つ者が、人間への嫉妬を暴かれて泣く。この構図は鳥肌が立つほど美しい。名前そのものが弱点だったのだ。

エンヴィーは自ら賢者の石の核を握り潰して消滅する。敵の手で倒されるのではなく、自分の本質を直視できなくなって自死を選ぶ。これは荒川弘がエンヴィーに与えた最大の「人間らしさ」だ。自己嫌悪に耐えられないという感情は、極めて人間的なものだから。

エンヴィーの本体は小さな寄生虫のような姿。巨大な怪物形態も、美形の人間形態も、すべて変身能力による偽りの姿だった。「本当の自分」を隠し続けたエンヴィーは、嫉妬という感情の本質──自分に自信がない──を体現している。

マスタングがエンヴィーを焼き尽くそうとした時、エドが止めた。「復讐で殺すな」ではなく「こいつは泣いてる。こいつは惨めなんだ」と。敵に同情するエドの姿勢は、等価交換を超えた「余分な1」の精神そのものだ。

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グリードの反逆──「欲張り」が仲間を選んだ

グリード(強欲)は全ホムンクルスの中で唯一、お父様に反旗を翻した。「この世の全てが欲しい」と豪語するグリードは、一見最も傲慢な存在だが、実は最も「自由」を求めていた。お父様の支配を拒み、人間の部下を持ち、自分の王国を作ろうとした。

一度目のグリードはお父様に溶かされて消滅する。しかし新たな賢者の石から「第二のグリード」としてリン・ヤオの体に宿る。ここからがグリードの真骨頂だ。リンの体を共有する中で、グリードは「仲間」の価値を知っていく。

「俺が欲しかったのは…こういうものだったんだな。金も地位も名誉も、この世の何もかもが欲しかった。だが最初に手に入れたかったものは──仲間だった」

最終決戦でグリードはお父様の体内に入り込み、お父様の体を脆い�ite石に変質させる。その代償として自分も消滅する。「強欲」の名を持つ者が、最後に自分の命を差し出した。欲張りの究極形が「自己犠牲」だったという逆説は、全108話の中でも屈指の名展開だ。

グリードの変化は、ホムンクルスが「成長」できることの証明だ。感情の純粋培養版であっても、経験によって変わることができる。これは荒川弘の人間観の表れだろう。

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ブラッドレイ(ラース)とプライド──人間と非人間の境界

キング・ブラッドレイ(憤怒/ラース)は全ホムンクルスの中で最も「人間に近い」存在だ。人間の候補者に賢者の石を注入して作られたため、老いる。一度きりの命を持つ。そして──妻を自分の意志で選んだ。

「あの女は私が自分で選んだ。私の意思だ」。この台詞はブラッドレイの全てだ。人生の大半をお父様の駒として生きてきた男が、唯一自分で下した選択が「妻」だった。操り人形にも自由意志はあった。それが荒川弘の描く「人間とホムンクルスの差は紙一重」というメッセージだ

一方、プライド(傲慢)はセリム・ブラッドレイの姿をした最古のホムンクルスだ。子供の姿で最も邪悪。影を操る圧倒的な力を持ちながら、追い詰められると弟のキンブリーの賢者の石に意識を乗っ取られそうになる。最終的にエドに敗れ、赤ん坊の姿に戻る。

最も人間的:グリード(仲間を選び自己犠牲)。次点:ブラッドレイ(妻を選んだ自由意志)。意外な人間性:エンヴィー(嫉妬ゆえの涙)。人間への愛着:グラトニー(ラストへの慕情)。最も非人間的:プライド(傲慢ゆえに人間を理解できない)。

荒川弘がホムンクルスに「人間らしさ」を与えた理由は明確だ。完全な悪を描きたいのではなく、「人間とは何か」を問いたかった。人間の感情を切り離して作った存在が、結局は人間に戻っていく。七つの大罪は人間の弱さだが、弱さがあるから人間は変われる。全27巻かけて描かれたホムンクルスの物語は、結局のところ「人間賛歌」だった。

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マンガ考察ラボ編集部

マンガ歴20年以上の考察チーム

週刊少年ジャンプ・マガジン・サンデーを中心に、20作品以上の漫画考察を毎日更新。作品の伏線・キャラクター分析・ストーリー予想を独自の視点で解説しています。

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